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次にどう活かすかが大事

9歳男児が父と一緒に予防接種のため来院しました。椅子には静かに座れたのですが、打つ直前になって怖がって思わず腕を引っ込めてしましました。

すると、そばに立っていたお父さんが、「動くな!」の大声と同時に、バシッ!とこめかみあたりを平手うちしたのです。

・・・(これは虐待行為。何か言わないと。でもどう伝えたらよいのだろう。)

・・・(しかも、この子は叩かれたことには全く無反応。普段から暴力に慣れてしまっているに違いない。)

 

戸惑いながらも、まずは接種に集中するしかありませんでした。

次は我慢してくれて接種が終わりました。


・・・(何か言わないと!この状況に黙っていたら、男児に「大人は助けてくれない」という諦めや、「これは普通のこと」という誤ったメッセージを伝えてしまうかもしれない。でも、子どもの前でお父さんを批難してもよいのだろうか。)

 

頭の中でぐるぐる思考が混乱して、すぐに決断できませんでした。

 

しかもそのお父さんはとても体格がよくて強そうでした。私よりは少し歳も上でした。そして息子にイライラの様子。

そんな相手に物申すのは、正直いうと怖かったのでした。

 

結局、私は何もできない無力感を抱えたまま、男児の背中を何度かさすりながら、「がんばったね、協力してくれてありがとうね、痛かったね。」とねぎらいの言葉がけを普段よりも丁寧にするので精いっぱいでした。

 

その日は一日中、後悔と無力感に襲われました。

 

クリニック院長やスタッフ、夫、そしてこのサロンの参加者さんにも、たくさん話を聴いてもらいながら、課題を整理をしました。

 

行動できなかった原因

①相手の強そうな容姿と、逆上させたときを想像(恐れ)

②子の前で親を批判すること(迷い)

③どう伝えたらよいのかを瞬時に判断できなかった(不慣れ)

 

解決策

①は仕方ない部分、人間だもの。ここに関しては自分を責めるのはやめようと思いました。

②そもそも批判しては意味がありません。批判からは相手の反省は引き出せません。子をむしろ傷つける可能性もあります。

③非暴力コミュニケーションの学びをフル回転させてみたら私なりに一つの答えがでました。

 

まずやるべきは、お父さんの一次感情への共感です。

息子への苛立ち感情の根底にあるのは、医療者に迷惑をかけるな、もしくは、迷惑をかけるような子の親である、という恥感情。

なので私が伝えるべき言葉はまずこれでした。

「何歳になってもワクチンが怖くて動いてしまう人はいますよ。よくあることです。私たちは慣れているので心配しないでください。」

 

そして、男児には「叩かれたのは嫌だったね。」という共感の言葉がけ。

辛い、悲しい、痛い、を代弁してあげることだと思いました。

 

お父さんが反省するかどうかはお父さんの課題であって私の課題ではない。

私が反省を促がそうとしても、よい結果は生まないですね。

 

次の同じような状況が起きたときに、瞬時にうまく対応できるかどうかはわかりませんが、

少なくとも前の私よりは何かできるだろうと思います。

 

こうして振り返って整理するのはとても大事です。

そして、整理できたのは、いろんな人に私の想いを聴いてもらったお陰さまでした。